「うちみたいな小さい会社で、LGBTQ対応なんて大げさなことはできない」そう感じている経営者や担当者の方は少なくありません。専門の研修制度、立派な相談窓口、社内の当事者ネットワーク。先進企業の事例を見ると、自社とのギャップに尻込みしてしまうのも自然なことです。ですが、LGBTQへの配慮は「規模の大きさ」で決まるものではありません。むしろ、社員一人ひとりの顔が見える中小企業やひとり会社だからこそ、お金をかけずに始められる小さな一歩があります。この記事では、背伸びをせずに踏み出すための考え方と、具体的な最初の一歩を整理します。1. 「努力義務」はすでに、すべての事業主にかかっている2023年6月23日に施行された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(通称・LGBT理解増進法)では、事業主に対する努力義務が定められています。同法第6条は、事業主が「普及啓発、就業環境の整備、相談の機会の確保等」を通じて、雇用する労働者の理解増進に自ら努めることを求めています。また第10条第2項では、情報提供・研修の実施・就業環境に関する相談体制の整備などの措置を講ずるよう努めるものとされています。これは罰則のない努力義務であり、企業規模の大小を問いません。「大企業だけの話」ではなく、ひとり会社であっても、これから人を雇う段階であっても、同じ方向を向くことが法律上も期待されている、ということです。裏を返せば、罰則がないからこそ、できる範囲から自分たちのペースで始められる、とも言えます。2. まずは「方針の一文」から最初の一歩として弊社がおすすめしているのは、立派な制度よりも「方針を一文で言葉にすること」です。たとえば、就業規則の理念や行動指針、採用ページなどに、次のような一文を加えるだけでも姿勢は伝わります。「当社は、性的指向・性自認にかかわらず、すべての人が安心して働ける職場を目指します」なぜ一文が大切かというと、当事者の多くは「この会社は安全かどうか」を入社前・在職中を通じて静かに見極めているからです。明文化された一言があるかないかは、その人が安心して力を発揮できるかどうかに直結します。費用はかかりません。必要なのは「決める」ことだけです。まずは経営者自身の言葉で、短くても構いませんので方針を文章にしてみてください。3. 日々の「呼称・言葉づかい」を見直す制度を整える前にできる、もう一つの身近な一歩が、日常の言葉づかいの見直しです。たとえば、「彼氏・彼女いるの?」を「お付き合いしている人はいる?」に、「ご主人・奥さん」を「パートナーの方」に置き換えるだけで、相手の性のあり方を勝手に前提としない会話になります。雑談や福利厚生の案内、年末の挨拶など、あらゆる場面に応用できます。これは「気をつかいすぎて何も言えなくなる」ことが目的ではありません。決めつけを少し外すだけで、当事者が「言わなくても済む居心地の悪さ」から解放される、という発想です。呼称への配慮は、新しい予算もシステムも要りません。今日からの会話で始められる、最もコストの低い取り組みです。4. 「相談先」を一つ決めて、明示するLGBTQ当事者が職場で抱える困りごとは、必ずしも特別なものではありません。健康診断、制服、トイレ、家族に関する手続きなど、日常業務のなかで生じます。このとき効くのが、「困ったときに誰に言えばいいか」をあらかじめ決めて、社員に伝えておくことです。専用窓口を新設できなくても、「まずは代表の私に直接相談してください」「総務の○○が窓口です」と一人決めて明示するだけで十分なスタートになります。ポイントは、相談を受けた内容を本人の同意なく他者に共有しないこと(アウティングの防止)を、あわせて約束しておくことです。「誰に言えるか」と「勝手に広まらない安心」がセットで初めて、相談先は機能します。ひとり会社であれば、相談先は実質的に経営者自身です。だからこそ「いつでも言っていい」という姿勢を、普段から言葉にしておくことが何よりの環境整備になります。5. 背伸びをしない。小さく始めて、続ける最後に、考え方の軸をお伝えします。社会の側は、確実に動いています。同性パートナーシップ制度は2025年5月末時点で全国530自治体に広がり、人口カバー率は92.5%に達しました(渋谷区・認定NPO法人虹色ダイバーシティ調べ)。同性カップルが公的に関係を認められる地域に、人口の9割超が暮らす時代になったということです。一方で、職場でカミングアウトしている当事者はごく一部にとどまる傾向が知られています。つまり、あなたの会社にも「言っていないだけ」の当事者がいる可能性は十分にあります。だからこそ、立派な制度の完成を待つ必要はありません。方針の一文、呼称の配慮、相談先の明示。この3つは、いずれも今週中に手をつけられるものばかりです。完璧な体制を一度に作ろうとせず、小さく始めて、続けること。それが中小企業・ひとり会社にとって最も現実的で、最も効果のある一歩です。O-DINARY for the Company弊社O-DINARYは、企業規模を問わず、LGBTQに関する研修・eラーニング・相談窓口・社内方針づくりを伴走支援しています。「何から始めればいいか分からない」「自社に合った最小限の一歩を一緒に考えてほしい」という段階からのご相談を歓迎しています。背伸びをしない、御社のペースに合わせた取り組みの設計をお手伝いします。まずはお気軽にお問い合わせください。出典(2026年6月 再確認済み)内閣府 性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進 https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/index.html日本法令索引(国立国会図書館) https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000161546衆議院 法律案本文 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21105013.htmPRIDE JAPAN(outjapan)LGBTQ理解増進法解説 https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/column/2030.html渋谷区ポータル 報道発表(2025-06-27) https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/hodo/hodo-2025/hodo_20250627.htmlnippon.com「パートナーシップ制度:25年5月時点で人口カバー率9割超す」 https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02465/PR TIMES 虹色ダイバーシティ プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000095691.html