「次の職場では、もう隠さなくていいのかな」採用面接を控えたLGBTQ当事者の方が、こうした不安を抱えることは少なくありません。応募書類を書く段階から、面接で何を聞かれるか、答え方を間違えたら不利になるのではないか——そんな緊張が、選考のスタートラインにすでに横たわっています。採用・面接の場面でのSOGI(性的指向・性自認)に関する不適切な質問は、応募者を傷つけるだけでなく、企業にとってはハラスメントや公正採用選考違反のリスクにもなります。本記事では、厚生労働省の「公正な採用選考」の考え方を出典とともに整理し、採用担当者が押さえるべきポイントをまとめます。1. 公正な採用選考の出発点は「適性・能力」厚生労働省は、公正な採用選考の基本的な考え方として、(1)応募者の基本的人権を尊重する「人を人として見る」姿勢と、(2)応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと、の2点を挙げています(厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。つまり、採用の判断材料にしてよいのは、その仕事を遂行するうえで必要な適性・能力に関わる事柄に限られる、というのが大原則です。性的指向や性自認は、仕事の適性・能力とは関係のない事柄です。これを選考の判断に持ち込むこと自体が、この基本原則から外れることになります。2. 「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項」は聞かない厚生労働省は、採用選考時に配慮すべき事項として14項目を示しています。大きく「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」「採用選考の方法」の3つに分かれます(厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」)。「本人に責任のない事項」には、本籍・出生地、住宅状況、家族に関すること、生活環境・家庭環境などが含まれます。「本来自由であるべき事項」には、宗教、人生観・生活信条、思想、支持政党、尊敬する人物などが挙げられています。SOGIに関する質問は、この14事項のいずれかに重なって把握されることが少なくありません。たとえば家族構成やパートナーの有無に踏み込む質問は「家族に関すること」「生活環境・家庭環境」に触れ、人生観や交友関係を探る質問は「本来自由であるべき事項」に近づきます。仕事の適性・能力と関係のない領域には立ち入らない、という姿勢が求められます。3. 採用選考で避けたいSOGI関連の質問具体的に、採用・面接の場面でやってはいけない質問の典型を整理します。いずれも適性・能力とは無関係で、応募者を萎縮させたり排除につながったりするものです。「結婚はしているの」「彼氏(彼女)はいるの」といったパートナーや恋愛に関する質問は、相手の性的指向を推測・詮索することにつながります。世間話のつもりでも、応募者にとっては答え方に迷う負担になります。戸籍上の性別と外見・名前の印象が異なることを取り上げて理由をたずねる、通称名の使用について根掘り葉掘り聞く、といった行為も避けるべきです。性自認に関する事柄は、本人が自ら話したいと望まない限り、選考側から踏み込むものではありません。また、応募者がカミングアウトしていない情報を、本人の了解なく他の社員に共有することは「アウティング」にあたり、厳に慎む必要があります。4. SOGIハラと企業の防止義務職場における性的指向・性自認に関する言動は、ハラスメントの問題と直結します。厚生労働省は、パワハラ防止指針において、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うこと、および労働者の性的指向・性自認などの機微な個人情報を本人の了解を得ずに暴露すること(アウティング)が、パワーハラスメントに該当しうる例であることを明記しています(厚生労働省「性的マイノリティに関する理解増進に向けて」)。これらの防止措置は、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)に基づき、事業主に雇用管理上の措置を講じる義務として課されています。採用・面接も「職場」につながる入口であり、選考担当者の言動も例外ではありません。さらに2023年(令和5年)には「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(令和5年法律第68号、2023年6月23日施行)が施行され、事業主には性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解増進への取り組みが求められています(内閣府)。採用の現場で配慮を欠くことは、こうした法の流れにも逆行します。5. 「排除しない」採用へ——企業ができること厚生労働省は、出自、障害、難病の有無、および性的マイノリティなど特定の人を排除せず、求人条件に合致するすべての人が応募できるようにすることが必要だと、事業主向けに周知しています(厚生労働省「公正な採用選考の基本」、同「性的マイノリティに関する理解増進に向けて」)。採用担当者ができることは、まず質問の設計を見直すことです。面接で確認すべきは、その職務に必要な適性・能力であり、私生活や属性ではありません。質問リストや評価シートをあらかじめ点検し、SOGIに触れうる項目を排除しておくことが有効です。加えて、応募書類で性別欄を必須にしない、通称名での応募を認めるといった運用上の配慮も、応募者の安心につながります。「排除しない」採用は、結果として優秀な人材の応募機会を広げる取り組みでもあります。O-DINARY for the Company弊社では、採用・面接の場面を含む職場のSOGI対応について、企業の人事・DEI担当者の方向けに研修・eラーニング・相談窓口の設計をご支援しています。「公正な採用選考」を自社の選考フローにどう落とし込むか、質問項目の点検から面接官トレーニングまで、実務に沿った形でご提案します。採用の入口から「ordinary(ふつう)」に応募できる職場づくりを、弊社と一緒に進めませんか。ご関心のある企業のご担当者さまは、O-DINARYまでお気軽にお問い合わせください。出典(2026年6月 再確認済み)厚生労働省 公正な採用選考の基本 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html厚生労働省 採用選考時に配慮すべき事項 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.htmlLGBT法連合会/PSRネットワーク(指針解説) https://lgbtetc.jp/news/1742/厚生労働省 性的マイノリティに関する理解増進に向けて https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index_00007.html社会保険労務士PSRネットワーク(パワハラ防止法解説) https://www.psrn.jp/feature/detail.php?id=21627内閣府 理解増進法について https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/index.html厚生労働省 企業の事例集 https://www.mhlw.go.jp/content/000808159.pdf