「うちの自治体って、パートナーシップ制度あるんだっけ?」そんな会話を、ここ数年で耳にする機会が増えました。2015年に東京都渋谷区・世田谷区で始まったこの制度は、いまや全国へと広がっています。一方で「結婚と同じなの?」「相続や税金はどうなるの?」という疑問は、まだあまり整理されていません。この記事では、最新の数字をもとに、いま日本の同性パートナーシップ制度がどこまで広がり、何ができて何ができないのかを、中立に整理します。1. 最新の数字:導入自治体は530、人口カバー率は92.5%渋谷区と認定NPO法人虹色ダイバーシティが共同で実施した全国調査によると、2025年5月31日時点で、パートナーシップ制度を導入した自治体は530にのぼります。人口カバー率は92.5%で、日本に住む人の9割以上が、制度のある自治体で暮らしている計算です。登録件数は累計9,836件。調査を開始した2017年と比べると、導入自治体数は約88倍、登録件数は約102倍に拡大しました。直近の伸びも顕著です。導入自治体数は2022年の224から2025年の530へと約2.4倍に増え、登録件数も同期間で3,164件から9,836件へと約3.1倍に増えました。さらに2025年の調査では、それまで残っていた「制度のない県庁所在地・政令指定都市」がゼロになったことも報告されました。なお、この共同調査は人口カバー率が9割を超え普及が進んだことを背景に、渋谷区としては2025年の発表をもって最後の調査とすることが発表されています。2. パートナーシップ制度とは何かパートナーシップ制度は、LGBTQなど性的マイノリティのカップルの関係を、自治体が公的に認める仕組みです。カップルが自治体に宣誓・登録することで、受領証や証明書が交付されます。ここで押さえておきたいのは、これが「国の法律にもとづく結婚」とは異なるという点です。あくまで各自治体が独自に設けている制度であり、内容や名称、利用できるサービスは自治体ごとに異なります。つまり「全国一律のルール」ではなく、住んでいる地域によって使える範囲が変わるのが現状です。3. 制度でできること自治体によって幅はありますが、パートナーシップ制度を使うことで、以下のような場面で家族に準じた取り扱いを受けられるケースがあります。ひとつは、公営住宅への入居です。多くの自治体で、パートナーを親族と同様に扱い、公営住宅の入居資格を認める運用が広がっています。医療の場面での配慮もあります。たとえば堺市の制度では、市の医療機関に対し、パートナーの面会や手術の同意を患者が病院に求めることができるとされています。岩手県でも、県立病院での面会手続きや病状説明などで制度を活用できるとしています。このほか、企業側が独自に対応するケースとして、家族手当などの福利厚生、携帯電話の家族割引といった「家族向けサービス」の一部が利用できる場合があります。ただし、これらは自治体や企業が任意で対応するもので、すべての地域・企業で保証されているわけではありません。4. 制度でできないこと:法的効力の限界一方で、パートナーシップ制度には法律上の効力がありません。これが結婚との最大の違いです。まず、相続です。法律上の婚姻関係にないため、遺言がなければパートナーに相続権はありません。また、相続税の配偶者控除(一定額まで相続税がかからない優遇措置)は、法律上の婚姻関係にある配偶者にのみ適用され、パートナーには適用されません。税の優遇も同様です。所得税の配偶者控除など、税制上の「配偶者」としての扱いは受けられません。医療同意についても、注意が必要です。前述のように自治体が病院に配慮を「求める」ことはできても、法的に同意権が保障されているわけではなく、最終的な対応は医療機関の判断に委ねられます。このように、パートナーシップ制度は当事者の暮らしを支える実務的な一歩である一方、法律上は「他人」として扱われる領域が依然として多く残っています。5. 司法の動き:高裁では「違憲」判断が相次ぐ制度の限界の背景には、同性同士の結婚が法律で認められていない現状があります。これをめぐっては「結婚の自由をすべての人に」訴訟が全国で起こされ、判断が積み重なっています。高裁段階では、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5つの高裁が、いずれも現行制度を憲法違反(違憲)と判断しました。これらは憲法14条1項(法の下の平等)や24条2項などに照らした判断で、たとえば大阪高裁は2025年3月25日に違憲の判断を示しています。ただし、その後の動きも見ておく必要があります。2025年11月28日には、東京高裁の別の訴訟(東京2次訴訟)が現行制度を「合憲」と判断し、二審段階での結論が分かれる形となりました。各訴訟は最高裁に上告されており、統一的な判断が注目されています。パートナーシップ制度は、こうした法整備が進むまでの「橋渡し」としての側面も持っているといえます。6. まとめ:広がる制度と、残る課題最新の数字が示すのは、パートナーシップ制度が人口カバー率9割超という普及段階に達したという事実です。多くの人にとって「制度がある」状態は、当たり前になりつつあります。同時に、相続・税・医療同意といった法的効力の壁は依然として残っています。「広がったこと」と「まだできないこと」を切り分けて理解することが、当事者にとってもアライにとっても大切です。制度を正しく知ることが、安心して暮らせる社会への第一歩になります。LGBTQ研修・相談なら O-DINARY「制度はあるけれど、職場でどう対応すればいいか分からない」——そんな声に、O-DINARYはお応えします。LGBTQに関する基礎知識の研修、eラーニング、職場の実態を可視化するサーベイ、当事者が安心して相談できる窓口まで、企業の状況に合わせてご提案します。正確な知識から、ともに「ordinary(ふつう)」な職場をつくっていきましょう。お気軽にご相談ください。出典認定NPO法人虹色ダイバーシティ/渋谷区(PR TIMES)「全国パートナーシップ制度共同調査」(2025年)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000095691.htmlnippon.com「パートナーシップ制度:25年5月時点で人口カバー率9割超す」(2025年)https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02465/国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」(2024年)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm堺市「堺市パートナーシップ宣誓制度」(2024年)https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/jinken/jinken/sakaipartnership.html岩手県「パートナーシップ制度」(2024年)https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/seishounendanjo/danjo/1065067.html札幌弁護士会「5つの高裁すべてが違憲判決を言い渡したことを受けた会長声明」(2025年)https://satsuben.or.jp/statement/2025/04/17/921/時事ドットコム「同性婚訴訟 用語解説」(2025年)https://www.jiji.com/jc/article?k=2025112800112&g=tha